ねこを見送った話

2月24日に飼い猫を見送った。リンパ腫を患っていて15歳だった。私が高校1年生の頃に、母が道端で拾ってきた子でまだ目も開いていない生まれたばかりの仔猫だった。母としては、体も弱っていたし最後にご飯くらい食べさせてあげたいと思って家に連れ帰ったらしい。だから名前もとりあえずの感じで ちび と呼んでいたけど、思いの外そのままとても元気になり名前に似つかわしくなくすごく大きな子に育った。お医者さん曰く、骨格が大きいのもあるそう。

突然うちに来たことに昭和の父親は怒り喚いてたけど、もともと猫好きだったらしく飼いだしてからは性格がだいぶ丸くなったし、ちびは私にとっても愛しい存在だ。私は20で家を出たから離れて暮らした時間の方が長かったけど、いつもソッと側に来てくれて覚えてくれてたように思う。冷たくて気持ちいいのか私の足を枕にして寝るのが好きな子だったなあ。

「あの時、連れ帰ってきて正解だったのかな、チビは幸せだったのかな」と母は言うがこんな可愛い顔していつもお腹を見せてくれてたのだから正解だとおもう。

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母から連絡をもらったのは24日のお昼で、翌日25日に帰省する予定だった。正直、母からLINE通知があった時点で「間に合わなかった」と思った。2月の初め頃に様子を見に帰った時と、その後の母からの連絡でもう長くはないことわかっていたから。食いしん坊のちびが好きなおやつを口元に持ってきても全然食べてくれなかったから。多少、足を引きづってたけど年末年始は元気に見えたんだけどなあ。定時まで仕事をしてそのまま急いで地元に帰った。

22時前に家に着くと、箱の中のクッションの上にちびが足を真っ直ぐにして横たわっていた。とても冷たく硬かったけど、少し長い毛は変わらず柔らかった。母がシャンプーしてくれていて良い匂いがした。頭を撫でられることが好きな子だったから、いつもするように頭を撫でようとしたら耳が固まっていて引っかかってしまい、うまく撫でれなくてそうか死んじゃったのかとその時に実感した。

母が箱から出してくれて、周りにカサブランカを置いてくれたので写真を数枚撮った。水色のリボンが首に巻かれていて、ハート型の木製チャームには名前と実家の電話番号が書かれていた。ちびがどこに帰れば良いのか分かるように、だそうだ。最後の数週間はほとんど水のみで何も食べなかったので、とても痩せ細っていた。手足こんなに長かったのかと、なるほど確かに骨格がしっかりしている子だなあと思った。

31にもなると親の前で泣きたくなくて、母親と目を合わさないように買ってきてくれたお弁当に「ご飯が少ない」と文句を言って追加で食べ物出してもらって一生懸命食べることに徹して堪えた。頷くぐらいしかできなかったから、口に物を入れてたかった。それはそれで子どもだと思うが。

ご飯を食べた後は落ち着いて、母親がちびの写真を飾りたいと言うので今まで撮った写真を見せながら話した。それから2人で可愛い骨壷やカプセルケースをスマホで探したり。翌朝10時に葬儀屋さんが来ると聞いて、当日22時と勘違いして何も用意ないまま職場から直行したわけだけど、2人でちびを想う静かな時間をゆっくり持てたので良かったと思う。それから同じ部屋で最後に一緒に眠れたしね。深夜1時過ぎ、「お通夜だから寝ない」と言っていた母がゆっくり寝落ちて何故か私はピザポテト1袋を開けて食べ切った…よく覚えてないけど猫の夢を見た気はしている。

 

翌朝10時に葬儀屋さんがきた。別で暮らしている父親と兄もきた。

一晩経ってだいぶ硬直が取れて、ちびにおはようと言っていつも撫でるように頭をガシガシ撫でた。ちびの耳が好き。大きくて薄くてピンと真っ直ぐに立って、触るといつでもヒンヤリしててベルベットみたいな滑らかさがあって。頭を撫でて耳をすこし引っ張るように撫でるといつも目を細めて顔を上げてくれるので、そのまま顎をガシガシしてお腹あたりまで下がってくと横にバタンを倒れてお腹だしてゴロゴロ言ってくれたなあ。

この日は風の強い日だったから、ちびの周りに飾った花があっち向いてしまうのを母親はずっとずっと何度も何度も綺麗な向きになるように直していた。私はもう落ち着いていて、その姿ばかり覚えている。それから暗い暗い焼却炉の中にいってしまった。いま思い出してもその瞬間はとても悲しい。

骨になった姿は私は見なかった。あとで小さくてコロコロした可愛い尻尾の骨をもらった。ちびが横になりながら尻尾をゆっくり上下に動かしているときに、サッとその下に自分の手を置いて尻尾があたるのが好きだった。あの可愛い尻尾だね。

自宅では飾り棚を設けて毎日見守ってもらっている。これはちょっと前の写真だけど、キッチンからも見える位置に置いた。カプセルに入りきらなかった分もあるのでお骨をまぜたリング作ってもらおうかなとおもっている。

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ちびは目が大きくてじじ猫になってもずっとベビーフェイスで可愛い子だったけど、性格はおっとりしてたな。よく人を見てる子だと思う。抱っこ嫌いだったし、私のことは弟のように思ってる感じで膝にも乗らなかったけど、最後の方は私がこたつにいると近くにきて何も言わずこちらの顔を見て、私が「おいで」と膝を叩きながら言うとすごすごと膝に乗ってしばらくじっとしていた。たくさん撫でた。少しでも愛されてることが伝わってくれたらと思った。

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ありがとうね。

学生のときは何本もイヤホンを食いちぎられたし朝早く起こされたり課題制作の邪魔もされたりしたけど、顔に怪我して人前に出れる状態じゃなかったから1ヵ月ほど休学してるとき、ずっと家に1人でいたけどちびがいたから寂しくなかったしベランダで隣に並んで外を見てたよね。兄にも姉にもシャー!と言うのに笑 時々、帰ってくる私のことは素っ気なくてもいつも穏やかに迎えてくれてありがとうね。

 

ずっとかわいい かわいいよ〜

私はずっとちびの体に顔を埋めたときの、柔らかさと温かさといい匂いを忘れないように生きる!